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WORK 仕事を知る

ドラマ「透明なゆりかご」
01

ドラマ「透明なゆりかご」

2018年に放送されたドラマ『透明なゆりかご』。産婦人科を舞台に「命」という非常に重くセンシティブなテーマを扱ったこの作品において、重要な役割を果たした若手女性ディレクターがいました。彼女の挑戦の物語を通して、ドラマ制作の内側をご紹介します。

「命」を巡るドラマから得た作り手に求められるもの

H DIRECTOR

プロフィール
所属
ドラマ
出身校
早稲田大学
趣味
フットサル、映画・ドラマ鑑賞、買い物
入社の決め手
テレビドラマの制作に携わるチャンスがあると思ったから
経歴
2011年4月
新卒入社
2011年5月
情報文化番組、エンターテイメント番組、ドラマ番組のAD業務やディレクター業務を担当
2013年4月
DVD販売事業の営業職を担当
2015年4月
ドラマ番組でディレクター業務を担当
担当ディレクターH

FLOW

プロジェクトの流れ プロジェクトの流れ
ドラマ「透明なゆりかご」 ドラマ「透明なゆりかご」

CHAPTER.01

産婦人科の光と影、その両方を描く挑戦

「来年夏放送予定の『透明なゆりかご』の制作に参加してほしい。全10話のうち1話は演出も任せるつもりでいる」2017年下旬、ドラマ番組のプロデューサーからそう打診された私は、大きなプレッシャーを感じていました。なにせ当時は助監督を経てディレクターになったばかりで、演出した作品も1本のみ。けれど、尻込みはしていられません。演出に携わるチャンスがある以上、たとえ自信がなくても、絶対にチャレンジするべきだ――。そう心を決めた私は、「是非やらせてください」とお願いし、制作チームの一員になったのです。

NEPのドラマ制作は、プロデューサーとディレクター陣、脚本家が何度も話し合いを重ね、作品の大枠や、ドラマの軸となるテーマを設計していきます。そこで決まったのが「産婦人科の光と影、両方を描く」「リアリティを大事にする」という2点でした。

『透明なゆりかご』には原作漫画があり、その内容は実話がベースになっています。そのため、どこかほっこりとしつつも、目をそむけたくなるような現実にも真摯に向き合うストーリーが描かれていて、制作チーム全員が強く心を打たれたのです。だからこそ、センシティブな内容からも決して逃げず、覚悟を持って本気で取り組もう。そんな共通認識のもと、ドラマ制作は進行していきました。

ドラマ「透明なゆりかご」

CHAPTER.02

ごまかし無し。徹底的に本物にこだわるために

テーマが決まった後は、より良い脚本づくりを目指して、産婦人科の医師や看護師さんへの取材や現場見学を重ねていきます。この取材では、単に情報をいただくだけでなく、医療に関わる皆さんのエネルギッシュさや温かさ、覚悟の重さに触れられたことも大きなモチベーションになりました。こうして得た生の声や現場の印象も参考に、原作をもとに各話のエピソードを構成し、脚本家が執筆→打ち合わせ→直しという工程を重ねて脚本をブラッシュアップしていきます。私も打ち合わせには毎回参加し、積極的にアイデアを出していきました。

そうして複数話の脚本が完成した段階で、いよいよクランクイン。チーフ演出による撮影が始まる中、私は大事な業務に取り掛かっていました。それは「医療考証担当」と「赤ちゃん担当」という2つのミッション。リアリティを追求するためには、医療従事者による脚本や演技のチェックはもちろん、各シーンに登場する医療機器や小道具におかしな点があってはいけません。そこで、取材でお世話になった先生方に協力を仰ぎ、注射針やカテーテルの太さまで徹底的に考証を重ねていきました。

特に一番のこだわりとも言えたのが、“生まれたての赤ちゃん”での撮影。NEPでもほとんど前例のない取り組みでしたが、撮影スタジオにほど近い産婦人科に全面協力していただき、私から出産直後のお母さんにドラマの趣旨や詳細を、熱を込めて説明し1人ひとり出演許可をいただきました。もちろん、撮影の際には看護師さん立ち会いのもと、赤ちゃんの安全第一の環境を用意。それでも現場は毎回緊張の連続で、カットがかかるたびにホッと胸を撫でおろす日々が続きました。

ドラマ「透明なゆりかご」

CHAPTER.03

全身全霊で演出に挑み、見えたもの

緊張感のある撮影を続ける中、いよいよ私の演出回が決定します。手掛けることになったのは、最終回直前の第9回。『透明な子』というタイトルで、小学生児童の性被害を扱った原作コミックでも特にシリアスなエピソードです。実はこのお話をドラマ化するかどうかはスタッフ間でも度々議論がなされ、私の中にも迷いがありました。けれど、専門家の先生に意見を伺った際に、「こういう経験をした時に、助けを求める場所として産婦人科やその他機関があること、共感して寄り添ってくれる大人もいるのだということが伝えられたら、きっとドラマ化する意味があると思う」という言葉をいただき、「精一杯やろう」と決心がついたのです。

撮影現場には、大先輩であるチーフ演出も立ち合い、私なりのカット割りや演技指導を見守ってもらいました。間違いが無いように、誰かを傷つけることがないように。細部まで配慮を徹底しながら、全身全霊で撮影に挑んでいきました。すべての撮影を終えた後は、44分の作品に仕上げるために編集作業へ。そして、「これならば」という手ごたえを持って試写(プロデューサー試写前のディレクター試写)に臨んだですが、そこでチーフ演出から「このままでは難しいな。一言でいうと単調だ」というまさかの寸評が……。

その瞬間はかなりショックでしたが(笑)、アドバイスをもらいながら編集マンと編集を洗い直すと、どこがいけないのかが見えて来て、テンポやシーンの意図の伝わり具合がだんだんと改善していきました。私は“安全な作品”を意識するあまり、「視聴者を物語にどう引き込むのか?」という大事な発想が抜け落ちていたのです。伝えたいメッセージを観る人にちゃんと届けるためには、そういうことも本当に重要なんだなと、あらためて思いました。

CHAPTER.04

この経験を糧に、いつかは自分発のドラマを

2018年9月、第9回『透明な子』が放送されました。スタッフからも視聴者からも大きな反響を呼び、「あきらめずに頑張ってよかった」と心から思えました。さらに、『透明なゆりかご』は文化庁芸術祭の大賞をはじめ、様々な賞を獲得。素晴らしい作品に参加できたこと、その中で自分の課題に気づけたことは、かけがえのない財産になっています。

まだまだ成長途中ですが、これからも一歩ずつ歩み続けて、将来は国際共同制作のドラマづくりに挑戦するのが私の目標です。「こんな作品を作りたい!」という夢を一番叶えやすいのは、きっとプロデューサーになることですが、NEPにはそうしたキャリアパスもしっかり用意されています。いつかプロデューサーになった時には、脚本の作りこみなど様々な面でディレクター経験が活きてくるはず。自分なりの経験と想いを込めて、見ている人が夢中になってくれるドラマを作り上げ、世界に発信していけたら最高ですね。

ドラマ「透明なゆりかご」 ドラマ「透明なゆりかご」

2020年1月取材